「大気から健康を守る基礎知識 その1
有機化合物形と毒性
覚えなくてよい 理解すればよい
VOC研 第17回 セミナー
2016年2月27日(土) 13時から14時
浅草 井門浅草ビル 7F TKPスター会議室
VOC研理事
有機化合物は種類が多いので、覚えようとしてもできませんが、技術者や研究者のように
難しいことは知らなくても良いから、今の時代を生き抜くために、全体の成り立ちを理解しいきましょう
基本的理解で全体の様子が分かれば、それぞれの問題はネットや本で調べたり、冨田先生に尋ねたりできるのです。
高温の無機化合物が混とんと存在していた地球の上に、なぜかメタンが出来ました。
このメタンが結びついて有機化合物が生まれ、35億年前に緑色の単細胞生物が出来るまでになりました。
緑色の微生物は水と炭酸ガスから太陽の助けで酸素を作り、大きな生物も生きられる空気の層を作りました。
地球の大きさをリンゴにすると、酸素の層はわずかに赤い皮の厚さです。
大昔の微生物が水に沈んで泥の下で化学変化してできたのが、今掘り出されている石油やシェールガスや石炭です。
全ての始まりはメタンです。
メタンは、一つの炭素の原子が4本の手を全部使って、水素の1本の手と結びついているものです。
4本の手というと、足も手も同じように使えるお猿さんを連想してください。
1本の手の水素というと、うーん、カタツムリでも考えましょうか。
お猿の炭素君が手も足も使って、カタツムリの水素君を1つずつ握りしめているのがメタンです。
お猿の手は4本。 カタツムリの手は一つだけで、それはいつも変わりません。
これが基本の1.
お猿の炭素君がほかの炭素君とも手を繋ぎたくなりました。
握っていた4つの水素君のうち、一つの水素君を手放して、その空いた1本の手で隣のお猿の炭素君と手を結びました。
残りの3個のカタツムリ、水素君は握ったままです。
隣のお猿の炭素君も、3つの水素君を握ったままで1本の手でお猿同士が結んでいます。
これが一重結合のエタンという化合物分子です。
お猿の炭素君は、エタン仲間の炭素君ともっと仲良くなりたいと思いました。
2つのカタツムリの水素君とサヨナラして、その手も隣のお猿の炭素君と繋ぎ増した。
残りの2つの水素君は握ったままです。 これは、2重結合の分子でエチレンという名です。
更にもっと仲良くなりたくて、もう一つ、足で握っていた水素君も放り出して隣のお猿の炭素君と両手と片手の3本を繋ぎました。
それでも一つの水素君は握ったままです。 これが3重結合の分子でアセチレンという名です。
お猿はいつでも4本の手足で何かを握っています。 カタツムリの水素はいつでも1本の手で何かにつかまっていますが、
、2つの炭素君は一本の手か、2本の手か、3本の手でつながっています。
これが基本の3。
今の手のつなぎを簡単に棒で書きましょう。
こんな形に駆けます。 これが分子構造式です。
もっと簡単に、メタン分子2つの間を棒で、つまりCH3-とCH3を繋いだ棒で書くこともできます。
炭素君は、どんどん沢山の仲間と手を繋げます。
その構造はこんな風に、炭素炭素炭素・・・と繋いでその脇にまだ手放さない水素とその数を書きます。
有機化合物は、炭素を中心にしたメタンがつながって出来るものなのですから、
わざわざ炭素と水素を書かなくても分かってるでしょ、と、もっと簡単に、棒だけで構造を書くこともあります。
棒の曲がり角が炭素君です。
その脇には、隣の炭素と結んで泣いての数だけの水素を握りしめているということは、
書かなくても分かっているでしょ、という書き方です。
飽和炭化水素(アルカン) の名称 |
|||||
炭素数 |
|
炭素数 |
|
炭素数 |
|
1 |
メタン |
16 |
ヘキサデカン |
31 |
ヘントリアコンタン |
2 |
エタン |
17 |
ヘプタデカン |
32 |
ドトリアコンタン |
3 |
プロパン |
18 |
オクタデカン |
33 |
トリトリアコンタン |
4 |
ブタン |
19 |
ノナデカン |
34 |
テトラトリアコンタン |
5 |
ペンタン |
20 |
エイコサン |
35 |
ペンタトリアコンタン |
6 |
ヘキサン |
21 |
ヘンエイコサン |
40 |
テトラコンタン |
7 |
ヘプタン |
22 |
ドコサン |
50 |
ペンタコンタン |
8 |
オクタン |
23 |
トリコサン |
60 |
ヘキサコンタン |
9 |
ノナン |
24 |
テトラコサン |
70 |
ヘプタコンタン |
10 |
デカン |
25 |
ペンタコサン |
80 |
オクタコンタン |
11 |
ウンデカン |
26 |
ヘキサコサン |
90 |
ノナコンタン |
12 |
ドデカン |
27 |
ヘプタコサン |
100 |
ヘクタン |
13 |
トリデカン |
28 |
オクタコサン |
132 |
ドトリアコンタヘクタン |
14 |
テトラデカン |
29 |
ノナコサン |
|
|
15 |
ペンタデカン |
30 |
トリアコンタン |
|
|
そんな決まりでメタンを作っていた炭素君が、つながりの炭素数を幾つまでも増やしていけます。
それが基本の4です。
1本の手で結んだ時の、 炭素君の分子はアルカンという血統の名前です。炭素の数によって分子の名前がついています。
ここには、131個のメタンだった炭素が結びついた分子の名前までがずらりと書いてあります。
覚えなくていいですが。
炭素数 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
一般式 |
数詞 |
モノ |
ジ |
トリ |
テトラ |
ペンタ |
ヘキサ |
ヘプタ |
オクタ |
ノナ |
デカ |
|
アルカン |
メタン |
エタン |
プロパン |
ブタン |
ペンタン |
ヘキサン |
ヘプタン |
オクタン |
ノナン |
デカン |
|
CH4 |
C2H6 |
C3H8 |
C4H10 |
C5H12 |
C6H14 |
C7H16 |
C8H18 |
C9H20 |
C10H22 |
CnH2n+2 |
|
アルケン |
|
エテン (エチレン) |
プロペン (プロピレン) |
ブテン (ブチレン) |
ペンテン |
ヘキセン |
ヘプテン |
オクテン |
ノネン |
デセン |
|
|
C2H4 |
C3H6 |
C4H8 |
C5H10 |
C6H12 |
C7H14 |
C8H16 |
C9H18 |
C10H20 |
CnH2n |
|
アルキン |
|
エチン (アセチレン) |
プロピン |
ブチン |
|
|
|
|
|
|
|
|
C2H2 |
C3H4 |
C4H6 |
|
|
|
|
|
|
CnH2n-2 |
|
アルキル基 |
メチル基 |
エチル基 |
プロピル基 |
ブチル基 |
ペンチル基 |
ヘキシル基 |
ヘプチル基 |
オクチル基 |
ノニル基 |
デシル基 |
|
CH3- |
C2H5- |
C3H7- |
C4H9- |
C5H11- |
C6H13- |
C7H15- |
C8H18- |
C9H19- |
C10H21- |
CnH2n-1 |
結ぶのが一本手の時の系統の名をアルカンと言いましたけれど、
2本の手の時にはアルケンと言い、3本の時はアルキンという系統の名前です。
覚えなくてよいけれど。
メタンを作っていた炭素君は、手を繋いでまっすく並ぶ時の他、輪を作ることもできます。
一本の手でつないで丸くなったのは一般にはシクロ炭化水素物と呼びます。
さっきの物のようにまっすく並んだものは、鎖状炭化水素と呼びます。
2本の手でつなぐところもあるとベンゼンという分子の輪が出来ます。
6個の炭素君が、2本の手結合も混ぜて輪を作ると、ベンゼンという分子です。
ベンゼンの輪を簡単に書く、こんな4通りの書き方があります。
ベンゼンの輪同士も幾つも繋げて、いろいろな構造の化合物を作ることができます。
鎖状化合物と繋いでも良いのです。
こうして、無限に分子の形を作ることができるので、有機化合物は、何千万という沢山の種類がどんどん増やされているのです。
さて、今までは元のメタンを繋げた炭素と水素だけの化合物を見てきました。
その基本の上に、水素のあったところに、別種の元素原子が入れ換った化合物があることを理解しましょう。
天然の有機化合物には、酸素原子、窒素原子が入れ替わって組み込まれたものが大部分で、
リンや硫黄の原子が組み込まれたものも少しあり、まれには金属原子も組み込まれていました。
人工的な有機物が作られるようになってから、海水を分解してとった
塩素などハロゲン原子を組み込んだ有機化合物がつくられ、盛んに使われ、
これは毒性が強い上にいつまでも消えないので問題になりました。
有機化合物では、特定の少数原子の集まりが、あたかも原子であるかのように特定の性質を持った原子団として、
水素のあったところに組み込まれることが多いのです。
酸素を含む原子団としては、アルコールを作るもの、アルデヒドを作るもの、ケトンを作るもの、カルボン酸を作るものなどがあります。
塩素などハロゲン原子を組み込んだ有機化合物は、ハロゲン原子の種類と数によって、こういう名前が付きます。
窒素は原子団として組み込まれるのです。
生体構造物質も窒素を含み、似ているので細胞が取りこんで、生体機能が狂うなど急性で嫌な毒性が多いです。
動植物にあるフグ毒やボツリヌス菌など猛毒なものも窒素を含む有機化合物です。
窒素を含む主な原子団は、茶色で書いたイソシアネート基、シアノ基、などのほか、毒性が強いものが多いのです。
近年、大気中の窒素を合成原料にする工業化が進んで、危ない有機化合物が新しく合成され始めました。
香料にも、消臭剤にも、医用・介護用品にも使われてきて、危ないことが増えました。
WHOヨーロッパ支部では、有機化合物系統ごとの合計濃度での長期暴露目標値を決めています。
有機化合物が多種類で新しいものが次々出てくるのに、少数の良く知られた化合物しか規制していない日本の考えとは違って、
賢い実際的なものだと思いませんか?
さあ、有機化合物とはどんなものかもうわかりました。
問題に行き当たったら、キーワードを考えて、ネット検索や参考資料、専門家への相談などで分かるようになりました。
次には、冨田理事から、正確なお話をお伺いできる下準備が出来ました。
戻る→