NPO化学物質による大気汚染から健康を守る会

==ごく新しい重大問題につき研究活動1== 2016年度の主張と活動記録  2016 Jul. 20

                   地球環境基金助成事業・高木仁三郎市民科学基金助成事業

             特定非営利活動法人 化学物質による大気汚染から健康を守る会(略称 VOC研)

             メール:voc@kxe.biglobe.ne.jp         ホームページ:http://www.npovoc.org/ 

                     Facebook: https://www.facebook.com/groups/687026064753048/

振込: ゆうちょ銀行, 当座預金, 化学物質による大気汚染から健康を守る会, 00120 4 595880

    〒102-0074  東京都千代田区九段南3-4-5フタバビル3F ()森上教育研究所内, 電話 080-6593-2768                 

目次: 1.今期初頭の主な活動   2.緊急アピール  3.セミナー記録  4.各地の会員活動状況

5. 高木仁三郎基金と地球環境基金で助成研究に決定 6.2016年度の実施計画   7.個人的対応

第1章.今期初頭の主な活動

3月27日に総会を開きました。総会は、前報でお知らせした議題で恙なく進行して、2015年度の報告と2016年度の計画が承認されました。役員は変更ありませんでした。

総会ごろからの主な活動は、絶え間ない固定観測点及び問題地点での分析調査、新たに生じた有害空気問題の資料調査、2回のセミナー・健康を守るための環境基礎講座、5回の研究発表、他グループ会合に参加多数、他グループへの寄稿、有害化学物質吸入被害と対策相談、高木基金および地球環境基金助成申請および報告事務、強力な室内空気洗浄器の試作実験、などです。

新聞などへの働きかけは努力していますが道が開きません。一方、各地の会員が独自に発生源関係者・監督機関などへの情報提供・説明は当会の陳情・交渉用セット資料を活用して代替え材料採用で低公害化に成功しています。

セミナー・健康を守るための環境基礎講座では、会員各自が、時と地点で変質目まぐるしい化学物質汚染被害に対して身に着けた基礎実力で独自に原因把握を可能にして、どんな事態に対しても身を守り地域をも守れるように、必要不可欠な基礎の化学と技術を伝えようとしています。

また、会員が当会の活動に託した貴重な被害体験を出版物にまとめよう、費用は独自でご用意くださると水野理事が編集に取り掛かりました。環境化学者の安原昭夫先生からも編集にご協力いただいています。会としての技術系意見反映も望まれます。

今期の特筆すべきことは、継続中の高木仁三郎市民科学基金からの研究助成に合わせて独立行政法人環境再生機構・地球環境基金助成申請が受理されて加わり、調査研究計画が開始されることです。詳細計画は第2章でご報告します。この活動には各種の測定機器の購入と保守が必要なので、会独自で補うための事業収入と会員を増やす必要もあります。支援会員の年会費では活動報告をお届けする費用にしかならないので、なるべく正会員または賛助会員になっていただきたいとお願いします。地球基金助成以外の相当な費用が会費と事業収入では間に合わず、事業費として相談料も決められています。相談にお応えする個別の資料作成・入手には、少なからぬ研究の時間と調査研究費用を費やしていることをご理解頂きご協力をお願いします。

上記の活動は、遠方に居られる会員も多いので、出来るだけ詳しい内容をこの活動報告の紙上に掲載することにしています。6月の活動内容は次の号として編集することにしました。

第2章.緊急アピール

2016may26        徐放製品の安全性に警告   NPO化学物質による大気汚染から健康を守る会

                 理事長 森上 展安 と 会員

農薬、香料、繊維加工、化粧品、インク、その他の身近な製品の有効成分効果を長く保つための徐放技術として、高分子(ポリマー)や超分子(ロタキサン)が種々な方法で利用され、その一部にイソシアネートが効果的な原料として利用されるものが多い1。イソシアネートはごく希薄な吸入によってもアレルギー性喘息や中枢神経系および心臓血液系症状を引き起こすなど全身毒性化合物であり、慢性肺線維症・間質性肺炎として、まれには急性的死に至るとして、欧米はじめアジア諸国でも特段の注意が払われている2,3,4。重合が進み揮発し難い固体になってさえ、残留単分子や解重合によっての空気汚染を無視できない。単分子のみならず2分子、3分子などとなっても、また蛋白質などとの複合体を作っても同様な作用をする5,6。種々な特性を求めてイソシアネート基を付与した有機イソシアネートは限りなく多種類が新たに開発されている。これらのために現在の空気分析の技術では個々のイソシアネートを全種にわたって検出することが出来ない。欧米では全種イソシアネートをイソシアネート基の合計として検出する分析が必要とされその技術も確立しているが、日本では全イソシアネート基を分析する試薬さえ輸入されていない。全イソシアネート検出が可能なものとしては、欧米で定評ある呈色反応による簡易分析器がわずかに輸入されているのみである。その簡易分析器で試したところ、化学物質過敏症患者らが苦痛を感じる環境のほとんどでイソシアネートの反応が見出された。化学物質ファクトシート6ではトルエンジイソシアネートの無毒性量等でも0.0002mg/m3と特段に低濃度であるが、流通量が最大のそれでさえ日本における環境データもない。欧米で問題にしているように多種多様な分子形態で用途が急速に増大してきた現状では、実際の生活環境汚染を全体的に調べて、国民健康を守ることが必要な重大事と考えられる。

文献・資料  1)下図. 2)TDI action plan, EPA 2011(トルエンジイソシアネート アクションプラン,米国環境省)

) You tubeIsocyanate Hazards(BullardTV)Spray form insulation Nightmare(CBC Marketplace) .

4)TDI MSDS 厚生省ホームページ・職場の安全サイト.     5)NIOSHイソシアネートの分析法・勧告書3.

ソシアネート利用の徐放技術は種々な用途に広がっている。イソシアネートは全身毒性の発症率が極めて高いアレルギー物質

(下記キーワードで検索した特許件数1993年以後)

 化学物質によるアレルギーの診断は確実な方法がまだない。

(資料2:「各アレルギー起因薬剤同定試験の陽性率」)

第3章.セミナー記録

3.1.入門 有機化学(第17回セミナーの1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3.2. 有機化合物と毒性(やさしい化合物構造と毒性の関係)

 

有機化合物は種類が多いので、覚えようとしてもできませんが、技術者や研究者のように難しいことは知らなくても良いから、今の時代を生き抜くために、全体の成り立ちを理解しいきましょう。   基本的理解で全体の様子が分かれば、それぞれの問題はネットや本で調べたり、冨田先生に尋ねたりできるのです。高温の無機化合物が混とんと存在していた地球の上に、なぜかメタンが出来ました。このメタンが結びついて有機化合物が生まれ、35億年前に緑色の単細胞生物が出来るまでになりました。緑色の微生物は水と炭酸ガスから太陽の助けで酸素を作り、大きな生物も生きられる空気の層を作りました。地球の大きさをリンゴにすると、酸素の層はわずかに赤い皮の厚さです。 大昔の微生物が水に沈んで泥の下で化学変化してできたのが、今掘り出されている石油やシェールガスや石炭です。全ての始まりはメタンです。

メタンは、一つの炭素の原子が4本の手を全部使って、水素の1本の手と結びついているものです。

4本の手というと、足も手も同じように使えるお猿さんを連想してください。1本の手の水素というと、うーん、カタツムリでも考えましょうか。お猿の炭素君が手も足も使って、カタツムリの水素君を1つずつ握りしめているのがメタンです。

 お猿の手は4本。 カタツムリの手は一つだけで、それはいつも変わりません。 これが基本の1.

 

お猿の炭素君がほかの炭素君とも手を繋ぎたくなりました。握っていた4つの水素君のうち、一つの水素君を手放して、その空いた1本の手で隣のお猿の炭素君と手を結びました。 残りの3個のカタツムリ、水素君は握ったままです。

 隣のお猿の炭素君も、3つの水素君を握ったままで1本の手でお猿同士が結んでいます。 これが一重結合のエタンという化合物分子です。お猿の炭素君は、エタン仲間の炭素君ともっと仲良くなりたいと思いました。 2つのカタツムリの水素君とサヨナラして、その手も隣のお猿の炭素君と繋ぎました。 残りの2つの水素君は握ったままです。 これは、2重結合の分子でエチレンという名です。 更にもっと仲良くなりたくて、もう一つ、足で握っていた水素君も放り出して隣のお猿の炭素君と両手と片手の3本を繋ぎました。 それでも一つの水素君は握ったままです。 これが3重結合の分子でアセチレンという名です。お猿はいつでも4本の手足で何かを握っています。 カタツムリの水素はいつでも1本の手で何かにつかまっていますが、、2つの炭素君は一本の手か、2本の手か、3本の手でつながっています。これが基本の2。

 

今の手のつなぎを簡単に棒で書きましょう。  こんな形に駆けます。 これが分子構造式です。  もっと簡単に、メタン分子2つの間を棒で、つまりCH3-とCH3を繋いだ棒で書くこともできます。 更に簡単に、メタンが2つだよ、(CH3)2と書くこともできます。 2本の手でつなぐ2重結合の時は、2本の棒で繋ぎます。3本の出て繋いだときは、3本の棒でつなぎます。これが基本の3

.

 炭素君は、どんどん沢山の仲間と手を繋げます。その構造はこんな風に、炭素炭素炭素・・・と繋いでその脇にまだ手放さない水素とその数を書きます。 有機化合物は、炭素を中心にしたメタンがつながって出来るものなのですから、わざわざ炭素と水素を書かなくても分かってるでしょ、と、もっと簡単に、棒だけで構造を書くこともあります。 棒の曲がり角が炭素君です。 その脇には、隣の炭素と結んで泣いての数だけの水素を握りしめているということは、書かなくても分かっているでしょ、という書き方です。

 そんな決まりでメタンを作っていた炭素君が、つながりの炭素数を幾つまでも増やしていけます。

それが基本の4です。1本の手で結んだ時の、 炭素君の分子はアルカンという血統の名前です。炭素の数によって分子の名前がついています。ここには、131個のメタンだった炭素が結びついた分子の名前までがずらりと書いてあります。

 結ぶのが一本手の時の系統の名をアルカンと言いましたけれど、

2本の手の時にはアルケンと言い、3本の時はアルキンという系統の名前です。覚えなくてよいけれど。

  

メタンを作っていた炭素君は、手を繋いでまっすく並ぶ時の他、輪を作ることもできます。一本の手でつないで丸くなったのは一般にはシクロ炭化水素物と呼びます。さっきの物のようにまっすく並んだものは、鎖状炭化水素と呼びます。2本の手でつなぐところもあるとベンゼンという分子の輪が出来ます。6個の炭素君が、2本の手結合も混ぜて輪を作ると、ベンゼンという分子です。    ベンゼンの輪を簡単に書く、こんな4通りの書き方があります。

 

ベンゼンの輪同士も幾つも繋げて、いろいろな構造の化合物を作ることができます。鎖状化合物と繋いでも良いのです。

こうして、無限に分子の形を作ることができるので有機化合物は、何千万という沢山の種類がどんどん増やされているのです。 

さて、今までは元のメタンを繋げた炭素と水素だけの化合物を見てきました。その基本の上に、水素のあったところに、別種の元素原子が入れ換った化合物があることを理解しましょう。天然の有機化合物には、酸素原子、窒素原子が入れ替わって組み込まれたものが大部分で、リンや硫黄の原子が組み込まれたものも少しあり、まれには金属原子も組み込まれていました。

人工的な有機物が作られるようになってから、海水を分解してとった塩素などハロゲン原子を組み込んだ有機化合物がつくられ、盛んに使われ、これは毒性が強い上にいつまでも消えないので問題になりました。有機化合物では特定の少数原子の集まりが、あたかも原子であるかのように特定の性質を持った原子団とし、水素のあったところに組み込まれることが多いのです。

 酸素を含む原子団としては、アルコールを作るもの、アルデヒドを作るもの、ケトンを作るもの、カルボン酸を作るものなどがあります。

塩素などハロゲン原子を組み込んだ有機化合物は、ハロゲン原子の種類と数によって、こういう名前が付きます。窒素は原子団として組み込まれるのです。

生体構造物質も窒素を含み、似ているので細胞が取りこんで、生体機能が狂うなど急性で嫌な毒性が多いです。

動植物にあるフグ毒やボツリヌス菌など猛毒なものも窒素を含む有機化合物です。

窒素を含む主な原子団は、茶色で書いたイソシアネート基、シアノ基、などのほか、毒性が強いものが多いのです。

近年、大気中の窒素を合成原料にする工業化が進んで、危ない有機化合物が新しく合成され始めました。香料にも、消臭剤にも、医用・介護用品にも使われてきて、危ないことが増えました。 

WHOヨーロッパ支部では、有機化合物系統ごとの合計濃度での長期暴露目標値を決めています。 有機化合物が多種類で新しいものが次々出てくるのに、少数の良く知られた化合物しか規制していない日本の考えとは違って、賢い実際的なものだと思いませんか?

さあ、有機化合物とはどんなものかもうわかりました。問題に行き当たったら、キーワードを考えて、ネット検索や参考資料、専門家への相談などで分かるようになりました。次には、冨田理事から、正確なお話をお伺いできる下準備が出来ました。

 

 


3.3.高分子化合物のイロハのイ 天然高分子から合成高分子へ

  CD記録 ¥500                 冨田重行 2016.02.27

 

 

 

 

 

 

3.4. 高分子材料の構造

  

 

高分子材料内の分子は、均一の化合物ではありません。モノマーのつながりの数、重合度が違うものが混じっています。

この例では、分子量6800が中心で一番多く、4000から9000ぐらいのまであります。散らばり方は、高分子の作り方で変わますります。重合前の1個の分子はモノマーと呼びます。1000個以下のつながりはオリゴマー、低分子とか、多分子とかと呼びます。ポリマー、高分子と呼ぶのにも、割合小さいものから、超高分子と呼ばれる100万個以上のつながりのものもあります。 また、高分子材料は、モノマーが同じなので同じ名前で売られていても、同じ高分子ではありません。

モノマーが同じジイソシアネートでも、分子の中心部分Rはいろいろなものがあります。トルエンだったり、ヘキサンだったり。 間をつなぐ化合物のジアルコールにもいろいろの中心部分R‘が使われます。エチレンだったりフェノールだったり。 それによって、出来上がった高分子が同じポリウレタンと呼ばれていても、分子の繰り返し部分の中に含むRとR‘がトルエンとエタンだったり、ヘキサンとフェノールだったりという具合に。単分子の間には挟む結合剤がジアミンだと尿素ポリマーになります。モノマーがジケテンの時にも、挟むものがジアルコールだとポリエステルが出来、

挟むものがジアミンだと、ポリアミンが出来ます。

一口にポリアミドと言っても、あるいはポリエステルといって、モノマー中心部分のRと、挟む分子のR‘がいろいろの分子の組み合わせものがあるのです。

 

また、シリコン樹脂の場合には、高分子の紐の中心は、シリコンと酸素の繰り返しですが、シリコンの両脇についているものは、メチルだったり、フェニルだったり、水素だけだったりします。シリコンの両脇が違うモノマーを混ぜ合わせることもできます。  全部メチルだったり、全体はメチルなのに、一部だけフェニルや水素にしたりできます。 もっとずっと複雑な有機の原子団に変えることもできます。勿論、イソシアネートを脇にしたシリコンもできます。 今述べたように、高分子はモノマーの間の結合剤が変えられるだけでなく、ある程度長くなった低分子・プレポリマーの間を別の結合分子で強くすることもあります。  たくさんのモノマーがつながった高分子がポリマー材料になった中では、高分子がどのようになっているのか見ていきましょう。

 

合成樹脂、プラスチック、ゴム、など高分子材料の中では、高分子の紐は分子構造の特性や材料に作る時の条件で、こんな風に種々様々な形になっています。 1本の硬い紐ではありません。 枝分かれしているもの、らせん状の物、折りたたまれたもの、交差しているもの、ぐちゃぐちゃなもの、など様々です。中には、規則正しく平行に並んだものや、毛糸で結んで作る玉のように中心の周りに集まったものもあります。規則正しく並んだものを、高分子の結晶と言いますが、材料の中全部が結晶になることはなくて、不文的に結晶になっているだけです。 長く紐になった高分子の間を、橋を架けたように結びつけるのが普通です。これを架橋剤と呼んでいます。

 

さっきのような形で材料の中にある高分子の紐の間は不規則なので隙間だらけです。その隙間の間には、気体や液体が入り込み、環境空気と出入りしています。 可塑剤など、添加物もその隙間に入っています。 幾つもの高分子化合物を混ぜて作った高分子材料の中は、顕微鏡で見ると不均一な組織構造になっているのもあります。これはアクリル樹脂とイソシアネートの例です。

 

高分子材料は、高分子だけでは一般実用材料になりません。材料として実用できる性質を与えるために、沢山の目的の添加剤を加えてあります。化学物質過敏症関係ではよく、高分子材料はリン酸系やフタール酸系の可塑剤が有害原点だと言われますが、有害な添加剤はそればかりではありません。可塑剤の中だけにも、いろいろな系統があり、リン系やフタル酸系ばかりでなく、有害性が高いものも低いものもあります。

 

高分子は使っていると悪くなります。 分子が壊れて分解しているのです。分解して環境に出て汚染原因になる分子もあります。高分子が壊れる原因には、作用の仕方や環境の色々なものがあります。熱や光や力や環境物質等です。使用や廃棄の時の機械的作用で起きる現象を調べてみましょう。機械的作業では材料は触れ合う相手に押し付けられる荷重を受けながら、表面に沿って動きます。 触れ合って動いている部分を調べると、小さな光る部分があります。紫外線の光は、滑っていく後ろにこんな風にありました。光りの中を調べると、イオンや電子や、電磁波がいろいろ混じっていて、これがいろいろな化学作用で、高分子劣化の大きな原因になることが分かりました。

 

 

化学作用の原因になる光の発生部分は、接触部が平らであるときには、尖っている時よりもはるかに大きくなります。また、同じ形の時には、周りの空気をポンプで引いて、空気圧力を下げると急激に大きくなりました。光るところが大きい時には、劣化の分解も多くなるということです。化学反応を盛んにする粒子が飛び出すばかりでなくて、表面近くの平均の温度も熱くなります。どのくらい熱くなるか計ってみると、一般的には、荷重が大きく、運動が早くなるほど熱くなります。これが毎秒6cmの時の荷重に連れての温度上昇、これが毎秒30cmの時。けれども毎秒100cmと、速度が速くなりすぎると、温度も上がり過ぎて、表面の化合物が次々と変質してしまうので、変質の度に表面温度が急上昇したり、冷えたりします。表面が劣化した層の深さは、どの速度の時にも荷重が増えるにつれて急速に深くまで、劣化するようになります。速度が速いほど少しの荷重増加で深さが増えます。

 

劣化が起きて、材料が擦り減る比例係数は、表面温度にだけ依存します。耐熱性がよいフッ素樹脂やシリコン樹脂で調べたところ、材料全体に対して環境に放出される量の割合は、90℃までに温まるだけでも、桁違いに増えています。シリコン樹脂は、常温近くでさえ、放出量が相当あります。

 高分子材料は、材料自体が複雑で多様な構造を持っている上に、環境汚染として放出される材料劣化のメカニズムも多様です。放出されるものも多様です。この様に多様な環境汚染発生全体への対策は、極めて困難、不可能と言えます。 最上の対策は、少しでも危ない可能性がある材料は使わないこと。使ってしまったものの廃棄処分には、性質バラバラな有機物汚染を、性質が分かりやすい無機物にまで酸化分解して除去処理すること。 実際には、適切な焼却しか方法がない、ということです。

 

3.5.環境の社会的課題

2016327日(日)、VOC研究会(津谷)

持続的で公正な社会に何が問われているか

瀬戸昌之(東京農工大学名誉教授)

はじめに  

 TPP(環太平洋経済連携協定)、原発(原子力発電)、ごみ処理などの議論は、主義主張が異なると平行線をたどりやすい。平行線を実りある議論にするために、共有の目的地が欲しい。主義主張が異なっても共有すべきは「持続的で公正な社会」であろう。社会が崩壊したら、立場や利益の主張どころではない。社会があってこそ人間活動が、そして札束も、意味を持つからである。また、人の歴史は民主・公正の追及であったからである。どのような社会を目ざすかは自由ではない。問われていることはどのような社会がより持続的で公正であるかである。以下では、昨今のTPP、原発、ごみ処理を題材に、持続的で公正な社に何が問われているかを考えよう。

1TPP(環太平洋経済連携協定)は何をもたらすか? 

TPPはたとえば日本の自動車や電気製品などの輸出を促進する。これによって日本は外貨を稼ぎ,安価な食料などが購入できるとする期待は大きい。しかしながら、TPPは、農林業のグローバル化・工業化・競争激化をもたらす。これらは結局、物質循環を遮断し、持続社会を遠ざける。それにもかかわらず、政財界はTPPをすすめる。TPPのほうが、農林業より、政財界に大きな経済的利益をもたらすからである。TPPをすすめるために、日本の農林業は「過保護」であり、「関税は高すぎる」などと不公正なキャンペーンを行い、TPPの問題点を曖昧にしてきた。

1.1農林業は過保護か

日本の農家あたりの農林水産の予算を日米英独仏韓の6か国と比較してみよう。日本は最低の約100万円、米国は400万円、ドイツは最高の500万円程度である。なお、農家への補助金としての直接支払いは、この額の35割であり、日本は最低の30万円、英仏は最高の250万円程度である。「過保護」は政財界による不公正なキャンペーンである。

1.2.農林水産物の関税は高すぎるか

 政財界は「日本の農林水産物の関税は高すぎる」という。ところが、関税の平均値は、米国は6%、日本は12%、EU20%、韓62%である。さらに、日本の農林水産の総生産額は8.2兆円、輸入額は8.0兆円である。輸出額は0.45兆円である。「鎖国」どころか充分に「開国」している。けっきょくは、「関税は高すぎる」もウソである。

(おまけ)TPPの本当のねらいは何であろうか。

2.なぜ工業化か

工業が生み出す汚染などの環境修復費用は工業界ではなく、やがて不特定多数の市民が払う。いっぽう、農林業が生み出す国土保全などの公益的価値に誰も支払わない。利益を追求する政財界は、農林業ではなく、とうぜん工業化に殺到する。この「不公正」が持続社会への政策を誤らせている。

2.1.自動車産業の過保護

自動車は今やさまざまな害を生みつつあるが、これを解消するための社会的費用は1台当たり1000万円から10億円にもなる(宇沢1974、杉田1991)。また、たとえば日本の高速自動車道路の建設・維持に毎年2.5兆円の税金を投入している。東京アクアラインは、通行料金では建設費の償還どころか、維持すらできない。維持のために1台の片道通行に、約1万円の税金を補填している。毎日往復すると、11台当たり730万円の税金を補てんしていることになる。これこそ過保護というべきであろう。

2.2.東京電力の過保護

福島県の汚染土壌は東京ドーム2.5個分である(毎日新聞、20141013日)。福島第一原発敷地のわずか4%に東京ドーム2.5個が入る。また、100年間「閉じ込め」ておけば、その間に放射能は約10分の1に減り、放射能の恐怖ははるかに緩和される。それにもかかわらず、処分場を自治体に押しつける国の施策は、原発の利益は政財界が独占し、汚染や不利益は国民全体に押しつけることである。原発こそ過保護・不公正の極みである。

(おまけ)ところで、汚染表層土を剥離すればその地域はきれいになるの?

3.ごみ処理の「燃やして、埋める」の近未来

 世界の自治体が所有するごみ焼却炉のうち約半数の1300基がこの狭い日本に乱立している。「燃やす」過程で大気を汚染し、子供たちを喘息などで苦しめ、「埋める」過程で地下水を半永久的に汚濁させてきた。ここでは物質循環は破壊され、汚染のコストは、焼却炉などの処理施設から利益を得ている汚染者ではなく、一般市民に負わされてきた。

さて、一般ごみは、紙ごみ、容器、そして生ごみからなる。この順にごみの焼却処理の今後を見てみよう。市民の分別・資源化の努力は「焼却」を不要にしつつある。

3.1.燃やす紙ごみ、燃やす容器はやがてなくなる

 日本の紙の生産量は年あたり約2600万トンである。約2200万トンの古紙は再生紙用として収集されている。なお、日本の古紙は質が高いので年あたり約400万トンは中国、ヴェトナムなどがトン当たり2万円程度で購入している。市民の「分別」の努力で、再生可能な紙の収集・再生は100%に近づきつつある。やがて、「燃やして、埋める」紙ごみはなくなると思われる。

 ペットボトルに代表されるプラスチック容器ごみの再生処理は自治体が悲鳴を上げるほど金食い虫である。後述するように、EPR(拡大生産者責任)を法制化すると、これらの問題は解決する。このとき、プラスチック容器ごみの「燃やして。埋める」も無くなる。

3.2.生ごみの堆肥化は焼却処理より高価?

 焼却炉で燃やされるごみの大半は生ごみである。生ごみの資源化が進めば、焼却炉は激減できる。しかしながら堆肥化には不公正な評価がつきまとう。

たとえば取手市のNPO緑の会は市の支援のもとに、家庭の生ごみ122トンを堆肥化している。このときのコストは1トンあたり16万円強である。これには、収集、堆肥化、人件費など全ての経費が含まれている。なお、大型施設はないから減価償却に関わるコストはない。政財界はこの16万円は高価すぎると言う。ほんとうであろうか。

自治体は家庭の生ごみを「燃やして、埋め」ている。全国では2011年に、4625万トンを2.1兆円の税金で燃やして埋めた。1トンあたり4.4万円の税金を投入している。したがって、「燃やして、埋める」が堆肥化よりはるかに安価であるという。ところが、これには施設や炉などの減価償却費・国費が入っていない。これを入れると1トンあたり718万円、さらに、燃やして埋めているのはこのうちの7割である。けっきょく、燃やして、埋めるごみの1トンあたりのコストは1125万円となる。焼却と堆肥化のコストは同程度というべきである。話はこれで終わらない。

1トンの生ごみから得られる堆肥を畑に鋤きこむと12㎥の雨水を浸透させ、洪水を軽減する。この12㎥の洪水をたとえば地下ダムで軽減させると48万円のコストがかかる。これを上述の短期的な堆肥化のコスト16万円から差し引くと、洪水防止の価値を考慮した「堆肥化」のコストは、1tあたり812万円以下となる。

いっぽう、自治体の「燃やして、埋める」のコストには、これにともなう汚染の浄化費・喘息の治療費などが含まれていない。これらを含めると燃やして、埋めるごみの1トンあたりのコストは1125万円よりさらに巨額になる。けっきょく、環境を考慮した広い視点のコストは堆肥化ははるかに安価、「燃やして、埋める」ははるかに割高となる。

(おまけ)自治体が事業者の「持ち込み」生ごみをわずか1tあたり1万円程度で、引きうけるとどうなるか。とくに「公正さ」から考えてみよう。

3.3.廃プラスチックの圧縮減容とVOC  

 「燃やさない」ごみ処理でも大気と人を汚染することが多い。たとえば、プラスティックを圧縮・減容する杉並中継所では、1996年の稼働と共に化学物質過敏症が発生した。管理する東京都は硫化水素が疑われるが、廃棄物質は排気口では1.2万分の1以下に希釈されるから、因果関係は不明とした。自動車排ガスの複合影響も考えられるなどとしている。

 この「杉並病」は現代疫学の弱点を浮き彫りにした。すなわち、疫学は11の因果関係は明らかにできるが、過敏症のような個人差の大きい反応、自動車排ガスなどとの複合汚染が関与すると、因果関係の解明は困難になる。杉並病に限らず、因果関係を明らかにすることは汚染者の責任である。過敏症を訴える住民に因果関係の解明を押しつけるメーカー、自治体そして司法の責任逃れに失望する。

(おまけ)瀬戸のアレルギー、米国へ薬

3.4環境問題に共通する社会現象―利益は独占し、不利益は分かちあう―

環境汚染や破壊に共通する社会現象は、「利益は一部の人が独占し、不利益は国民全体が分かちあう」という「入会地の悲劇」(G.Hardin,1968)である。

東京電力福島第1原発は、20113月、炉心溶融の大事故を起こした。原発による過剰な利益は原子力ムラが独占してきたにもかかわらず、大事故の後始末には国民の税金が流し込まれている。また、多くの人はこの不公正を免罪している

たとえば、2020年の東京オリンピックの新国立競技場の建設費はいつの間にか当初予算の2倍になっている。一部の関係者が税金をむさぼり、その陰で国民の財が蚕食されていく。なお、オリンピックはアマチュアのスポーツ祭典であったから税金の投入を認めたのではないか。今はプロの祭典である。「プロ」の祭典に、「聖火台」を忘れるのはさもありなんだが、税金投入は説明がつかない

 汚染のタレ流しが、イタイイタイ病、水俣病、四日市ぜん息などをもたらした。タレ流しによる経費節減の利益はその企業が独占する。その陰で、タレ流しがもたらした汚染の浄化や、これらが引きおこした骨、神経、ぜん息などの病気の治療や生活保障に要する費用は国民全体が支払うことになった。

 さらに、国は必要性が説明できない諫早湾の干拓、八ツ場ダム、焼却炉などの建設を強行している。建設に巨額の税金が流れこみ、その陰で国民の税金が蚕食されている。

(おまけ)エミッションスキャンダル」、 15/日、アスベストも

4.公正な社会へ―汚染や無責任をとがめ、良いことを応援する―

 PPP(汚染者負担の原則)は、汚染者が浄化の責任を果たせと言うごく当然のルールである。また、EPR(拡大生産者責任)は生産者(メーカー)は製品に責任を持つのみならず、廃棄された製品の処理まで責任を拡大せよとしている。これらは「公正な」経済活動を担保するためのOECD(経済協力開発機構)のルールである。しかしながら、政財界はPPPEPRの法制化を妨げている。

4.1PPP の政財界による無視

たとえば、経産大臣になった宮沢さんは、川内原発再開で何を言ったか。「原発で何かあったら、国が全面的に責任を負います」。ここにはPPPの見識は皆無である。子供の使いである。

また、朝日新聞(2012112)13面全部を使って、「放射性物質の除染は国が責任を持って推進します(環境省)」を掲載している。朝日新聞にもPPPの見識はない。  

4.2EPRはごみ問題を解消する

ごみ問題は以下の三つである。1)ポイ捨てや大規模な不法投棄 2)資源化困難な製品の生産 3)焼却処理による大気や地下水の汚染

そして、これらの問題はEPRで容易に解消する。これを皆で確認しよう。

たとえば、ペットボトルのお茶の価格が現在は120円なら、これに80円のデポジット(予め上乗せ)を入れて200円にする。空のボトルが販売店や生産者に返却されたら生産者は30円を消費者に返却し、残りの50円で生産者は容器を資源化するのである。30円が返却されるなら、空のペットボトルのポイ捨てを誰もしない。この50円で廃ペットボトルの処理が生産者に義務づけられたら、生産者は焼却処理を必要とする製品を生産しない。焼却はあまりにも高価につくからである。必然的に大気や地下水の汚染はなくなる。

なお、EPRが実施されれば、ペットボトルに限らずすべてのごみ問題は無くなることを確認しよう。また、家電リサイクル法が如何に悪法であるかの理由を再確認しよう。

4.3.経済的インセンティヴによる応援

たとえば日本のコメの生産額は年2兆円程度であるが、水田の生み出す洪水防止、地下水涵養、土壌保全などの価値は数兆円にもなる。この価値の恩恵をすべての人が享受しているにもかかわらず、日本のコメの価格は世界一高いと文句こそ言え、水田が生み出す「良いこと」を経済的に応援する政策はない。このような不公正な例を2つあげてみよう。

(例1)洪水を防止するためとして,貯水量30万トンの地下ダムを1000億円程度で建設している。ダムの耐用年数を50年とすると1トンあたりの治水費は4万円程度となる。

いっぽう棚田のわずか1㎢は30万トンを貯水して洪水を防止する。また,炭粉を入れて耕している畑地や,間伐材を除去しながら手入れをしている山林地は貯水の能力が増加する。この増加分は,10㎢の畑地や山林では30万トンになる。

地下ダムなどに巨額の税金を流し込む。これをよしとするなら、持続的な社会に必要な棚田や山林地を管理している農家に、治水費を払うのが公正ではないか。なお、このときの支払額は「地下ダムの1トンあたり4万円」の100分の1400円でもよい。それでも1㎢の棚田や10㎢の畑地や山林に1.2億円を応援することになる。

(2)地球環境にやさしいとしてエコカー1台に25万円程度の税金を応援している。換言すれば、COの炭素1トン削減あたり5万円の税金を補填している。これをよしとするなら、木材などをエネルギー源として使用する人には、COの炭素1トン削減あたり5万円以上を応援すべきであろう。木材などの利用はカーボンニュートラルであり、地球温暖化を引きおこさないからである。さらに、光合成産物を炭の粉―炭粉-にして土壌に投入している人には1トン当たりたとえば10万円以上を応援すべきであろう。炭粉の土壌への投入はエコカーよりはるかに温暖化防止の公益的価値を生み出すからである。

逆に、CO2を吐き出す人間活動には1トンの排出あたり5万円の「炭素税」を課すのが妥当であろう。このような施策があって、はじめて「公正さ」が確保できるのである。

 

おわりに

持続的で公正な社会を阻害するものは汚染・破壊の責任を免罪し、公益的価値を無視することであった。とくに重視すべきは政財界による税金の不公正な浪費である。TPP, 原発、ごみ処理には合法を装った税金浪費が蔓延している。さらに、ダムや道路などの大型公共事業、新国立競技場や東日本の被災地に流し込まれる巨額の税金など、「私的な」お金では絶対にやらないことを、税金ならここまでやるのかとあきれる。

PPPの法制化、汚染の修復と公益的価値の適正な定量化は、誰かがやってくれるわけではない、広く長期的な視点をもつ市民と環境学者にこそ可能である。政財界のウソや不公正を見抜きながら、持続的で公正な社会を実現するための輪を拡げたいものである。                                    

 

第4章.高木基金と地球環境基金で助成研究に決定

  (自己資金2,220,000+高木基金助成継続400,000+地球環境基金助成新規2,000,000円=4,620,000円)

4.1.高木基金  活動名:地域環境における有害性VOC発生源と分布の探求―続き

調査研究の内容

調査研究の概要

この揮発性有機化合物による大気汚染についての継続研究は、非常に毒性の高い有機化合物が急速に種類と発生源を変化させて居住環境に広がり、住民の健康に重大な影響を及ぼしていることを明らかにしてきた。住民を含むすべての関係者は、原因化合物とこの問題の重要性を科学的に理解するように変わらなければならない。ごみ処分場からばかりでなく、家電器具や柔軟剤、医療器具からさえも毒性の高いイソシアネートおよびシアン化水素が放出されて環境を汚している。それらは化学分析器で検出が困難であるため、被害者の苦しみは著しいにもかかわらず公には無視されてきた。しかし我々はケムキーTLDモニターを使って、それらを観察できる。加えて、JMS社製簡易VOCモニター1000でクロマトグラフの時間変動を観察することで、原因物質飛来源を考察している。これからこの調査を継続して事例を積み重ね、説得性のある科学的根拠を確立して社会を動かして被害を防ぎたい。調べるべき材料を構成している化合物グループ中の原因化合物を確かめなければならないので、例として数種の柔軟剤が分析される。さらにまた、発生源から飛来した浮遊微粒子をデジタル顕微鏡で調べる。これまで協力的な多くの市民グループに、健康影響化学物質についての情報を発信してきた。2015年度には、茨城県医療生協やまちづくりの会放射能測定グループなどの支援で土浦市議会に提言した。グリーン連合と共に国会議員との懇談会にも出席し、この問題を説明した。この研究によって確かめられた資料を用意して、行政各所に提案しようと計画している。

 

調査研究の対象とする問題の概要と、その重要性・緊急性

新たな化学物質による大気汚染により重大な健康被害が発生しているが、苦痛を訴える被害者の症状に対応する原因物質特定が困難で理解されないために救済されず、予防もされていないのが現状であり、対策が急務である。当会が独自に輸入した毒性ガス簡易分析器によって、被害大気にはシアン化水素や極めて薄くても発症しやすいイソシアネートかあることを発見した。これらは通常の分析検出が困難なために日本の公的機関や学会でさえ無視されているが、欧米では以前から重大な物質として万全の対策がなされ、近年は市民環境への用途の拡がりから一段と対策・啓発活動が盛んになった化合物である。イソシアネートなど窒素を含む有機化合物は近年の合成樹脂材料に広く利用され、非常に毒性が高いものが多い。公開特許などを調べるとイソシアネートの日本での独自の用途が多面的に急速に広がっていることが読み取れ、環境汚染の実態と被害症状との関連を把握して広く知らしめ、社会に警鐘を鳴らすことが急がれる。次々と生ずる新たな汚染に対応自衛が可能なように、市民への基礎知識の普及も必要であり急がれる。

 

調査研究の対象とする問題に関するこれまでの論点、先行研究、当事者の見解・主張など

欧米ではイソシアネートなど含窒素有機化合物は、早くから重大な危険性と用途の広がりが認識されていたにもかかわらず日本では無視されたまま用途のみが急増して、それを知らぬままに重大な健康被害で財産も人生も失った市民が各所に多発している。医学的にも多くの場合、化学物質過敏症として40年前から提唱された一般化学物質によるものとしか認識されず適切な投薬もされていない。職場の危険物質としてはごく微量でも喘息等をアレルギー的に起こし易く慢性化・重症化して死に至ることもある物質として、環境管理濃度は0005ppm(トルエン50ppmの1万分の1)として特段に低い濃度に規制されている。しかし通常の化学分析、精密気体分析の方法では、希薄で消失しやすい上にイソシアネート類が多種混合し、単分子のみならず他分子も含むイソシアネート大気汚染を分析することは困難である。欧米では全てのイソシアネート類合計を分析しなければ安全ではないと認識され、それを可能とする公定分析方法が確立されているが、日本にはそれを実施できる試薬さえ輸入されていないのが現状であり、その必要性を主張する専門家さえいない。諸外国では熱心な研究と関係機関の協力が充実しているが、日本では規制対象でないために環境学会における発表は見られず、医学会でも職業による急性患者の臨床報告がわずかにあるのみである。

 

この調査研究の手法とねらい

イソシアネート汚染が原因であると思われる被害者が後を絶たないので、欧米で古くから職場の個人暴露管理などに活用されてきた簡易分析器ケムキーを輸入した。ケムキーは設置場所の空気を分析器に吸引して試薬テープに一定時間反応させ、リトマス試験紙同様に変色反応で化合物存在を検知する原理のものである。実際には反応はレーザーで促進し、反応程度を光学的に読み取り、試薬テープは対象化合物ごとに専用の物を使い、露出時間も対象化合物ごとに定めてあり、データは15分ごとに一コマずつ送られて2週間の連続測定が出来る。被害発生場所では簡易クロマト型VOCモニターにより連続観測し、飛来する汚染物質全体とケムキー分析の時間的関連を見て、汚染源推定などに役立てる。またポケット型TVOC計と連続パルスオキシメータで各自の症状発現と汚染環境との関連を調べる。これらは当会独自の方法であり、見落とされていた汚染を確かめ診断治療や予防対策に役立てることができる。

 

この問題に取り組むことになったきっかけ

プラスチックごみを主にした積替施設から高濃度で大規模な大気汚染が発生し、通常汚染とは異なる重大な健康被害が発生した後、同様な被害報告(重症)が各地から寄せられるとともに、日常環境の中でも同様な汚染による症状再発が体験された。宇井純先生をはじめ環境分析など多方面の研究者・技術者の教えを受けるとともに、内外の医学論文、公開特許などを調べた。結果として、建築土木、電気機器・塗料・繊維・医療などに広く使用されるようになった高性能合成樹脂(プラスチック、ゴム)が製造・使用・廃棄により大気を汚染すること、殊に窒素を含む化合物が急性または慢性の重大な症状を引起していることを見出した。住民の被害調査を繰り返し、対応する疫学調査問題も作成した。

 

関連するテーマでのこれまでの調査研究実績

最初は行政に依頼して精密分析調査を繰り返し実施し(一億円以上費やしただろう)、その記録は8人の環境分析専門家に読み方を指導してもらって検討し、極めて危険なシアン化合物・イソシアネートなど含窒素化合物が特に多く、疫学調査による被害症状および日常での再発有機物質もまたそれと合致した(緑風出版・杉並公害病の資料とした)。全国的な同様被害のために続行した研究は簡易クロマトグラム分析器による連続観測でこれまで他に研究がなかった汚染種類と濃度およびその変動パターンが各地で実測され、地域による種類の特徴、伝播の広さが認識された(約600万円寄付と会費など、内高木基金助成0710年度約200万円)。イソシアネートの国際会議(於米国)があり日本から唯一の出席者を当会から送り調査結果をポスターで発表した(1213300万円寄付と会費など)。分析し難いシアン化水素とイソシアネート、アミン、ホスゲン等の検出が必要不可欠と、専用の比色式分析器ケムキーを輸入して各被害現場で原因究明に宛て、それらの結果を環境化学会で発表した。現在、柔軟剤の香料徐放剤として合成樹脂が使われ、2つの被害地ではイソシアネートとシアン化水素が検出され関連を検討している(1415年約300万円弁護活動・寄付・会費など、うち高木基金100万円)。

 

調査研究の具体的な方法と実施スケジュール

A.環境における有害大気原因の分析による追及測定実施

 4月~7月

柔軟剤の有害性成分の確認:

 各種の市販品について、柔軟剤の香料徐放剤として使用している合成樹脂にイソシアネートが関係している様子をケムキーによって確かめ、また他の成分のクロマトグラフをクロマトグラフ型VOCモニターで調べて、環境大気中の汚染と比較するための資料とする。

 4月~8月

  柔軟剤からの汚染が疑われる化合物汚染変動の観察:

既に知られている有害成分の界面活性剤のアミンや4級アンモニアのほか、当会に相談されている入院や救急搬送など重症被害症状に対応することが疑われるイソシアネート、シアン化水素など含窒素有機化合物について、ケムキーによる簡易分析で被害地域での時間による濃度の変動を調べ、また、クロマト型VOCモニターによる連続観察で汚染全般との関係を調べ、それらの有害汚染がどのような発生源からどのように拡散しているか検討する。

4月~翌年3月の適宜な時点

建築に伴う大気汚染の測定:

建築材料中の室内濃度指針物質以外の有害化合物も含めて、建築土木工事中の全般的な汚染化合物の伝播飛来の状況をクロマト型VOCモニターによるクロマトグラフの変動とケムキーによる毒性化合物検出経過とで観察する。適切な例が得られれば、被害を感じる工事と被害を感じない工事とを比較検討し、対策提案に役立てたい。

4月~翌年3月

廃棄物処理施設周辺での大気汚染観察:

彩の国周辺、柏市産廃施設周辺などでケムキーによる有害化合物観察とクロマト型VOCモニターによる連続観察を行い、長期間のデータを整理検討する。

B.症状発現と環境汚染の関連調査

 4月~翌年3月

   TVOC計と連続パルスオキシメータおよび手首血圧計を各自携行して、種々の生活の場での脈拍、血中酸素、血圧と環境汚染状況の関連を調べ、健常者と化学物質被害者との環境反応の異同を検討し、診断治療の試料とする。

C.被害状況の把握と対策指導、化学物質に関する必要基礎知識の指導

 4月~翌年3月

被害者・行政・司法も含めて規制にないどんな有害物にも対応して判断できるように調査技術基礎知識の学習会を必要に応じ随時少人数単位で実施する。

 

調査研究の成果をどのように活かすのか

   当会の調査研究で明らかになったイソシアネートや有機シアン化合物から発したと思われるシアン化水素など分析し難いが健康影響が重大な含窒素有機化合物に関連した大気汚染研究は、日本環境化学会、日本環境学会、日本大気環境学会、日本臨床医学会等での論文発表や研究発表演題、日本学術振興会科学研究費助成課題、エコケミストリー会報を見ても、気が付かぬようで取り上げているものはほとんどない。日本産業医学会で職業上、イソシアネートによる23の重症被害例が発表されているだけである。当会は研究機関でなく市民団体ではあるが、被害者からの感覚情報に基づき、被害者自身で取り扱える簡易分析法を指導して上述の有害物質を把握しているので、その詳細な発生状況、被害状況などをそれらの学会・研究会などで公表し、専門研究者が課題として取り上げるきっかけを作りたい。

1.   対策提案活動

   被害者が居住する地域の議会、自治体、生活支援センター、医療機関など身近なところに当研究で知り得た環境危険性についての情報を届け、それぞれの地域での具体的問題ごとに適切な対策を提案したい。 例えば土浦市には、簡易分析器を購入して市民環境有害化学物質汚染の実態調査を行うとともに、環境が疑われる健康被害者の周辺調査に貸し出すこと、市民への情報提供などを求めかけている。

  また、環境省、厚生省、国土交通省、総務省、国立環境研究所などに調査した分析と被害情報や外国の取り組みに関する情報を提供し、適切な対策を求めるとともに調査に協力を申し出たい。

2.   市民教育活動 

 常に市民とともに研究してきた当会であるが、今後も市民への調査研究方法の紹介と指導、情報発信の方法を改善して調査研究結果を市民に活用されるよう、活動の体制を整えていきたい。市民一人一人が有機化学と毒性について調べたり、専門家の話が理解できたりするように基礎的な力をつける援けをしたい。


4.2. 地球環境

活動名:空気中の化学物質から健康を守るための環境調査と対策及び市民への啓蒙普及活動

(国内の民間団体が行う国内の環境保全のための調査研究活動、大気・水・土壌環境保全分野)

助成活動事業総額(自己資金含高木基金+助成):3,825,000円(2016年度分)内申請額2,000,000

               (予定助成額 2017年度5,000,000円、2018年度4,000,000円)

   活動概要

近年の便利で効果的な経済活動に伴い、従来は地球上になかった系統の人造有機化合物とその応用材料が身近に用途拡大した結果、重大ではあるが医療施設等で原因を特定できないような健康被害が増加した。当団体の研究成果として、これらの原因の可能性が高いと考えられる大気・空気に混入した強い毒性の化合物を確かめ、国民健康への悪影響を低減し、被害防止のための活動を、市民や行政機関等と連携して行う。

これらの毒性化合物には専門家による精密分析器でも検出不能なものも存在するが、当団体のこれまで培ってきたそれらの検出可能な輸入比色分析や簡易クロマトグラフでの連続観察・調査・研究の経験や実績を活用し、今度はさらに市民が危険な毒性化合物の知識を会得し、現存の発生源の推定や人体への影響について調べ自ら低減の行為をすると共に行政等に資料を提供して予防対策を行えるようサポートする。

さらに団体としては、得られた結果を文献資料と照合して大気・空気汚染原因を深く考察し、原因抑制と適切な診断治療などのための対策を進言する。また、消費者が安全材料を選択するようにそれらの知見の普及啓発をはかる。

これらの活動の結果として、有害な有機化合物汚染を抑制し、健康被害を予防して医療費負担も軽減して、国民の幸福な生活に役立てたい。

 

   解決したい課題・問題点

国連調査によると大気汚染を原因とした死者は2012年に700万人(全死者の8分の1)うち屋外370万人と屋内430万人にのぼり、死因は急性呼吸器感染症・肺癌、心臓疾患、脳卒中で、こうした“殺人大気汚染”を「最も深刻な環境リスク」と警告し、各国が早急に連携し対策に取り組むよう呼びかけている(国連公衆衛生環境局長マリア・ネイラ氏20152月来日講演記録)。

日本の大気汚染防止法では、人の健康を損なうおそれのある物質で大気の汚染原因となるものが248種あるとしているが、その中で濃度を指示しているのは規制物質・優先取組物質23種で室内濃度指針物質も加えても重複を除きわずか37種に過ぎず、残りは放置されている。

身近な空気の著しい異常を感じ、同時に著しい健康不調に陥り、そのため生活困難を訴える国民が次第に増えている。一方、従来地球上になかった人造有機化合物が利便の為に環境にも広がり、その使用方法が健康影響という観点から適切かどうかの検討が不十分である。過去において、数種類の新薬が非常な有効性で許可され普及した結果、深刻な健康障害を生じたのと同様のことが新材料を原因とする空気汚染で発生している可能性を否定できない。

 空気中の汚染物質は極めて多数であり、現在の日本での精密分析では困難または不可能なものもあり、被害原因物質を特定して予防対策と救済対策に繋げられない現状で改善が必要とされている。

 

    課題解決に向けた本活動の戦略、予想されるリスクに対する対応策

市民が自ら空気中の毒性化学物質に起因した、身近な健康被害に対する予備知識を身に着けることが、健康リスクの低減、被害の予防という観点から重要である。市民が利用できる簡易で確実な合計汚染濃度連続分析記録器(TVOC計)、有害化合物汚染呈色反応記録器(イソシアネート、アミン、シアン化水素、塩化水素など毒性物質のみ)、簡易クロマトグラムVOCモニター、粉塵検査用具(スキャンニング顕微鏡)など空気汚染を検査する装置と脈拍・血中酸素濃度・血圧などの体調連続測定記録装置(PC記録機能付きパルスオキシメータ、手首血圧計)を複数台用意し、柔軟剤香料等の徐放剤、電気製品の絶縁材・断熱材、建築・土木材料、廃棄物蓄積・焼却前処理等について、実験研究的にもそれらを使いこなしながら身近な材料の有機化学と空気汚染の物理現象について、市民がその基礎を理解するための学習の機会を設け、それらで得られた情報を身体症状変化との関係で調べ、どこでどんな有害物質に注意しなければならないか、軽減する操作設計管理の条件は何か、何処でどのような体調不良の症状があるとき、どのようなことに注意しなければならないか、助成期間内に全部を突き止めることは不可能であろうが、ある程度の成果を得たところで医学的情報収集結果を添えて医療関係者の協力を呼び起こして対策を可能にして、進言・普及啓発に資する。また環境化学会、臨床医学会などで発表し、CS支援センター、グリーン連合など会員が多い市民団体に向けた啓発活動も実施地域の消費センター、国民生活センター、市区町村自治体など対応が早い身近な関係機関に情報を提供するとともに、環境省、厚生省、国土交通省、経産省、総理府など監督官庁に対策を提言する。

当団体において蓄積した新しい知見など実績があるものの、毒性化学物質の汚染状況に対する関係各所の調査、認識や理解が十分とはいえない状況にある。調査結果から得られた成果の普及にはこれらに対して根気よく働きかけることが必要であり、いかに市民と協働・啓発し関係各所に働きかけるかが課題である。

 

  目標

(1)  本助成活動が目指す最終的に実現したい望ましい環境の状態(上位目標)

国内全般において、大気・空気中の重大な有害化合物の存在の様子とそれが影響する症状把握が容易となることで、汚染発生を抑制し適切な対応医療が施され、化学物質による発病が少ない環境を得る。

上位目標の実現に寄与する望ましい成果(アウトカム)

. イソシアネートなど有害化合物汚染情報の関係各所への理解が浸透するようになる。

(関係各所に対する提言が5件増加する。)

イ. 市民の自発的かつ適切な消費材料選択で有害化合物発生を減らし環境危険性を減少させる。

 (CS支援センター等への相談件数を現状の50%に減少させる。)

ウ. 有害化学物質による症状を知り早期に環境を改善し適切な医療をうけて重症化と新発生を抑制する。(連携している医療機関等への相談、受診件数を現状の50%に減少させる。)

(3)アウトカムを達成するための直接的な活動目標(アウトプット)及びアウトカムを達成するための具体的な手段(活動計画)

活動1 

○アウトプット

・ 有害原因汚染物質の発生源と発生機構の特定と汚染状況調査結果を環境化学会、臨床医学会等で発表し、それに応じて対策を実施若しくは検討を行う市民、企業、自治体、省庁等が10%以上増える。

・ 各自治体、環境省、厚生省、国土交通省、経産省、総理府などに年1対策を提案する。

○活動計画

1. 建築・土木作業近隣および廃棄物処理施設近隣の揮発性有機化合物全量TVOCと、イソシアネートやアミン、シアン化窒素、塩化水素など含窒素化合物を主とする毒性が強く近年の新しい材料に関する化合物検出を簡易分析で連続的に調べ、分布と伝播状況を推定する。

2. 合成樹脂徐放剤を含む柔軟剤や合成樹脂を含む電気製品等を使用する室内外の空気について上記同様に化合物を調べる

活動2 

○アウトプット

・ 基礎と実際のセミナー(30人・年2回)と会報(年2回)で啓発する。

国民生活センター、環境市民団体、監督官庁等に情報提供する(各所に毎年1回)。

○活動計画

・ 有機化学物質の基礎、毒性判断基礎および分析法について学習会を当団体東京事業所において開く

・ 活動(1)および(3)で得られた調査結果やセミナー(学習会)内容を記した会報を発行する。

・ 会報と同様な情報を協力している環境市民団体に提供する。

・ 国民生活センター、監督官庁など有害物を含む製品管理に関する機関に情報提供と提言する。

活動3 

○(2)ウを達成するためのアウトプット

・ 有害汚染場所での症状と体調の関係を体調検査機器と資料調査で客観的に明示する。

・ 医療機関と連携し、情報を交換する。

○活動計画

・ 連続記録パルスオキシメーターや手首血圧計で体調を測定しながら環境の異なる場所に移動して、測定された体調の場所による変動を調べ、環境の有害化学物質との関係を調べる(20人以上)

・ 調査対象としている有害化合物汚染が予測される場所での被害症状と状況を聞取り調査する20人以上)

・ 文献資料で調査対象化合物の健康影響について調べ、欧文の場合には翻訳して活動(2)の情報とするとともに前期2項目と照合して総合的な情報とする(50件以上)

・ 医療機関(白川病院、ユビキタスクリニック、そよ風クリニック)と連携して調査考察結果を確かめ、保険医協会などに情報文書を提供する。

〔活動の内容〕

 

    活動・成果の持続性、団体の自立(助成終了後の展望、予定)

次々と新たに生じる可能性が高い有害化合物大気・空気汚染による健康障害問題に対して、市民各自が調査して原因を究明し、環境改善対策と医学的対応を各自で求められるような基礎的知識をこの助成を受ける調査研究の間に身に着けてほしい。当団体はその市民を支えて、科学技術的な有害な大気・空気汚染化合物についての調査研究活動及び啓蒙普及活動を継続する。

分析調査する活動で実施費用を徴収し、実験研究経費の80%を確保して、それぞれの場合の原因化合物と飛来状況を調査研究し続け、時代とともに変化する問題への対策を進言して行く。被害対策の相談に対応する活動で、相談と対策資料作成の労賃を請求して、事務的運営費の50%に充てる。それ以外の費用のためには正会員・支援会員の会費を充てる他、賛助会員を増強し、また会報やホームページへの広告料、寄付金を充てる。

 活動の発展につれて入会申し込みする被害者があるので、活動を共にすることで調査研究の技術の学習を促し、活動を継承発展できる人材を育成する。ただし、当団体の活動は極めて多面的であり、また相当に専門的・科学的な知識と技術を必要とするので、早急に人材を育成することは困難といわざるを得ず、外部からの獲得も視野に入れ、事業を安定して継続できる環境を構築する。

 当団体で目標として実施している有害化合物に関する調査研究の課題は、欧米など諸外国では予てから、また最近特に重要視され集中的に取り組まれている課題であるが、国内の関係学会や関係市民活動団体では取り上げていない。当団体の活動がきっかけになり、多くの機関で当団体同様な課題について調査研究活動が盛んになり、活動成果がより早く、またより完全に環境改善での発病予防の成果を上げることを期待したい。

 当団体で有害性が判明した製品については経済活動という面での支障は生じるかもしれないが、過去におけるスパイクタイヤ、PCB、DDTとBHC、フロン、アスベスト、六価クロム、キノホルム、クロロプロマジン、なども大きな経済的破綻なく克服されてきたように、疾病予防の効果が市民に広く認識されることで当団体の社会的役割を増大させると共に、前述の活動経費の確保に向けた対策を実施し、助成期間終了後の持続的発展につなげることとする。

 

     外部との連携体制(活動を進めるために現実的に協力が見込まれる利害関係者

病院関連

  ユビキタスクリニック (化学物質症状について医学的な情報と指導を受け、被害例や大気分析についての調査研究の考察について意見を交換している。)

  白川病院 (大気汚染による被害例の情報を提供されて当会でも原因を検討し、合同のセミナーを開いた。今後の農薬など化学物質による健康障害の診断・治療と清浄な食品生産・提供、についての協力を相談している。)

  そよかぜクリニック(上記2病院と化学物質によると自覚している健康不調者の神経機能障害の診断と療養指導で協力している。)

官庁関係

茨城県化学物質過敏症対策連絡会議 (茨城県ホームページに掲載されている同会議と情報交換・対策活 動をする。)

 環境省環境安全課 (27年度終了の微量化学物質による健康影響調査研究を補うためにその研究班各位の指導を仰ぐ)

 厚生省化学物質評価室 (労働環境と当団体の環境調査で得た化学物質健康問題の情報を交換して対策に役立てる。)

 公害等調整委員会 (発生している大気中化学物質汚染問題について当会の調査情報を提供し問題点を明らかにする。)

その他

 一般財団化学物質分析評価機構(精密化学分析と当団体の連続簡易分析観察結果との情報交換を行う。)

 NGO・グリーン連合 (会員となり情報交換している)

 化学物質過敏症支援センター (会報に調査結果を寄稿する等情報交換している) 高木仁三郎市民科学基金 (14年度と15年度に調査研究助成を受けた。16年度は限度額50万円申請中)

 

    活動の実施スケジュール(1年目-3年目)

年月

活動内容

1年目

2年目

3年目

4  5  6  7  8  9  10  11  12  1  2  3

 

 

活動1イソシアネート等の有害情報理解の浸透  1)近隣汚染毒性化合物の連続分析

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2)有害製品による汚染調査

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活動2市民の安全材料選択4)有機化合物と毒性の基礎セミナー

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5)調査結果説明とセミナー内容の会報

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6)協力市民団体に情報提供

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7)関係各所に情報提供と対策提言

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活動3体調測定と調査で医療対策 8)移動中の体調測定

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9)聞き取り調査

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10)文献資料調査

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11)医療機関との連携・情報提供

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助成活動事業総額

3,825千円

5,000千円

4,000千円

第5章 各地の会員活動状況、代替え材料への変更

 化学物質汚染で著しく体調悪化する都内の会員Sさんや静岡のHさんから、近隣で始まる予定の工事による環境空気汚染を防ぐために、前号の陳情資料特集でお送りしたイソシアネートの毒性と環境存在に関する資料のセットを提出しながら話し合って、害が少ない工事材料に変更して貰えるようになって良かった、というお知らせを頂いています。

 少し前まではなかった合成有害有機化合物が身の回りの材料でこんなにも多くの用途が開発されていることやどんなに有害なのかは、日本の理系・医系の研究者たちの間で話題になることもなく、ほとんど気づいていないのです。きちんとした資料を読みこなしてそれを提出して説明すれば、普通の関係者は耳を傾けて資料で確かめて下さって、近隣への健康被害抑制を工夫して頂けるのが普通です。

 根気良い証拠固めのご努力で、勝訴のような示談に成功して、ほどなく勝ち取ったお住まいに移られる会員Kさんからのお知らせもありました。

 しかし多くの司法活動に関しては、検出された共存した規制化学物質などの種類に惑わされて、司法に理解を迫る的確な鋭い立証説明には至らずに敗訴に悲しむ会員も少なくありませんでした。

 ほとんど全部の健康被害大気の実例にイソシアネートが関与していました。

諸外国だったら普通の消費者にまでイソシアネートの特段の有害性が知れ渡っているらしいことは、会員AoiTonboさんから送ってこられた新しいアクリル系塗料の広告では、まずタイトルの製品名「イソシアネートを含まないアクリル塗料(Acrycote Non-Isocyanate Enamel)」と大きく書いてあり、写真の下の「用途(Market)」を6項目につづく「特徴」としては10項目の最上欄として“イソシアネートを含まない塗料(Iso-cyznate Free coating)”と掲げてあります。イソシアネートを含まないということが、最も有効な宣伝になるほどに、イソシアネートの有害性は消費者社会にまで知れ渡っていることが分かります。それなのに日本では、関係者の話題に上ることもなくて猛烈な勢いで身近な環境に広がっています。「苦しい、これは変だ」という被害者の声も性質の悪いクレーマーの文句扱いでネグレクトされています。何たる違いなのでしようか。この違いはどこから来るのでしょうか。ともかくもVOC研は、今の環境公害の根幹化合物としてイソシアネート利用材料を消費者に知らせ、関係者に知らせ、それぞれの立場でその日からの対策を願うことにします。

その塗料広告は、VOC研のFacebook https://www.facebook.com/groups/687026064753048/ に紹介があり、Acrycote Non-Isocyanate Enamel.pdf ポータブルドキュメントフォーマットで開きます。 同じVOC研のホームページでは同じくAoiTomboさんの紹介で、香料の徐放性カプセルに揮発できるイソシアネートモノマーがどのくらい残っているかという研究の(いろいろな手順で出来るだけ減らすという目的の研究なのですが)概要も載っています。固まって液体でなくなっても、イソシアネートは相当残っていて蒸発したり、小さなカプセルに含まれて浮遊したりで私たちを襲ってくるのです。

VOC研のFcebookに参加をお勧めします。下記のメールで森上輝さんにご連絡するだけで設定してくださいます。     voc@kxe.viglobe.ne.jp

 

第6章 2016年度の新しい実施計画と資料調査計画

 私たちはこのような市民自身の手で、自分自身の環境状況とを健康状況を継続して調べる測定器を日本の中で開発してほしいと熱望してきました。汚染物質全体の種類と濃度の変動が記録できる簡易クロマト型のVOCモニターと、長期記録が出来るパルスオキシメータは国産の優れモノ(JMS社製とコニカミノルタ製)を既に駆使して、専門家でないと使えない高価な精密測定器では見いだせない変動する実態の調査結果を報告しています。宿願の全種イソシアネートなどの簡易分析は3年前にケムキーTLD輸入が出来て、かねてからの予測が確かめられたばかりか、市民が苦しいと訴える場所で次々と新しく開発された汚染源材料が見出されています。これらを用いた画期的だった調査研究は、さらに丁寧にクロマトグラフ測定に標準試料での検討を増やして種類の推定に役立てるとか、使い込み過ぎたケムキーに新鋭ケムキーを追加して濃度記録を容易にするとかの発展も計画しています。
 しかしこれらの測定器は精密で予備知識の上での注意深い取り扱いが必要で、拠点から遠方地域での調査が困難でした。もっと簡易な取り扱いで広範な地域にわたる調査研究を実施できる測定器類を、外国の製品で冨田理事が探し出して、総会の後の第18回セミナーで冨田重行理事が今年度の調査研究計画③で新しく導入する測定器について、下記の図を使って話されました。

 健康を守るのに測定実験を有効にするために、有害化合物について手分けして資料調査することも計画しています。


 

  


第7章 個人的対策

7.1. 空気を洗う

 セミナーの時に冨田重行理事から「室内空気が苦しい時に、水で洗うときれいになり、体調が回復した」という体験を教えられました。具体的には、市販の冷風扇を、風邪が直接当たって寒くないように向う向きにして枕もとに設置するのです。次のセミナーの時にはさっそく試した会員の体験談が弾みました。ご夫婦で一台ずつ冷風扇を使って翌朝から体調が良くなった冨田学さんの体験談。柳沼さんは、空気を水中で泡に吹かせて完全に洗おうと、養魚用の送風ポンプに沢山の水中ノズルを付けた装置を開発されて体調改善の効果が絶大だったと報告されました。特殊仕様の部品を取り寄せて組み立てることをお願いできるかもしれません。中国製の空気洗浄機も似た原理ですが、送風量が格段に大きくて強力です。

7.2.医学的知識に

 化学物質障害は、主な原因物質が同じでも、濃度や混合物質、時間経過や温度・風・位置の高さ、体調や労働の強さ、その他種々の条件で複雑に変わります。病院を受診する時や弁護士や行政に話す時などにも、上手く話すのは容易ではありません。少し調べてから相談の形で話したら、良く判断していただくのに役立つこともあります。ご自身の健康影響を調べるのに、メルクマニュアル家庭版がお勧めできる一つです。本で入手できますし、各ページをネットで調べることも出来ます。

 

 事務局から、編集後記  

この編集ではさぞ読みにくい紙面だ恐縮ですが、ともかくも正確に活動時用起用をお知らせして、お独りずつのご判断にゆだねたくて、読みやすさを目指す編集をせずに生の字用法そのままをお伝えすることにしました。

 6月に日本環境化学会、日本臨床医学会、高木仁三郎市民科学基金2015年度研究報告会などで発表講演した事、ダイオキシン環境ホルモン国民会議と共催した香りに関するシンポジウム、CS支援センターニュースに掲載された香りばかりでない徐放技術の有害性などについては次号以下でお知らせします。土浦まちづくり市民の会で918日㈰に茨城コープ2階セミナー室・土浦駅徒歩10分セミナーを開く予定です。VOC研・茨城事業所は土浦市の市民活動団体連絡会の「こらぼの」というのに登録しました。

今年の春から過敏症が激しくなった人が多い医療福祉生協いばらぎで69日に土浦のカフェルーエ共催でのセミナーを開き、除草剤その他の農薬にも徐放性包接剤としてイソシアネートを使用し始めたことを話したのですが、その席で直ちに除草剤を使わない運動をしよう、刈り取った草を資源としてメタンガスを発生させ、自家発電し、残渣を肥料化しよう、という具体案が提案され、さっそく草木を貯留する仮の穴が掘られて、草木が投入され始めました。

除草剤が徐放性に変わったことは、散布後の草が一斉に枯れずに何週間もの間に徐々に枯れていく様子で分かります。TVOCは低いのに未だかってない高濃度のイソシアネートが長期間継続的に検出されました。情報を活用しながら身のまわりの観察と体調の関係に気を配り、被害を防ぎましょう。 

(事務局・森上輝・津谷裕子・西村はるみ)

 

会員募集

 

支援会員  入会費1,000円、年会費2,000円(会運営権利なし)

正会員   入会費5,000円 年会費5,000円(会運営権利有り)

賛助会員  入会費10,000円 年会費10,000

 

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