大気中VOCのその場分析における連続観察


2016年6月8日

大気中のVOCのその場分析による連続観察について通称VOC研究会から報告します

材料機能の発展→含有する新合成有機化合物
製造・利用・廃・棄リサイクル方法の変化→VOCs種類の変化
人体への影響機序の変化
空気汚染発生と伝播状況の変動
対応する分析方法の選択・利用

簡易分析器のその場連続測定の利用

3種類の連続観察機器VOCモニター、呈色試験紙を用いて有毒化学物質をモニターするケムキー、
セイフエアのバッジ式比色試験紙を使用した。体調観察の指標として連続式血中酸素濃度、心拍数、血圧モニターを用いた。

VOCモニターは携帯型の簡易クロマトグラム。VOCを吸着させ、
吸着菅を加熱させて精製空気でVOCをパージしてガスクロ分析を行う構造のものである。

存在している汚染物質全体の様子を見る。(トルエン/キシレン/エチルベンゼン/

スチレンモノマー/パラジクロロベンゼン/TVOC(総揮発性有機化合物)

比較が基本。標準試料で種類と濃度をチェック。やや取扱いが難しい。

複雑な操作を自動化しているのでごく精密な機械である。

 

Honeywell社の比色式毒性気体分析器のケムキーTLDはこのようなものである。

日常生活でよく見かけるウレタン製品(自動車のシートパッド、マットレス、シューズ等)の原料である
イソシアネート*1系の化学物質(TDI:トルエン・ジイソシアネート、MDI:ジフェニルメタン・ジイソシアネート、
HDI:ヘキサメチレン・ジイソシアネート等)を使用する工場の製造現場で、作業環境の常時モニターとして使用されています。
同社の高感度イソシアネート検知器(
260ppb )は、ガスクロマトグラフィー等による分析機器に比べて安価で、常時モニターが実現できる。


ケムキーの作動機作は呈色試薬を塗布した化学テープに測定ガスを通過させ、
対象ガスと反応してできた呈色スポットの濃度を光電計測してガス濃度を出す。

測定例1.

保守のため屋根塗り替えした日のその住宅室内のVOCモニターのクロマトグラフです。
時間変動が大きく、工事が開始されると高くなり、終了するとさがっていることがわかります。

前のクロマトと同じ工事を行った日を左端にした室内のTVOC濃度の約6日間の記録。
屋根塗装中以外には、室内はほぼ一定に保たれている。
塗装工事の行われた日には、作業中だけ閉切った室内も高濃度になる。
外部から侵入した汚染は、約300μ/m3だけの濃度を増加させた。

ケムキーを用いて毒性ガスをモニターした。
屋根塗装中の6時間だけイソシアネートが検出されている。
その前日の16時ごろに準備作業中でうっすらとイソシアネートが検出。
塗装の翌日の12時ごろにまた少し検出された。TVOCが一度上昇している時間に対応している。

測定例2

同じ住宅で昨年夏、80m離れて他の家の陰になる地点に住宅新築が始まった。
基礎工事の日に、それとは知らず窓を開けて昼寝していたので激しい喘息よう発作で病院に運ばれた。
工事がだいぶ進んでからの外装や内装の工程の頃らしい。TVOC濃度と主な成分比率である。
さっきの原因不明の汚染に比べてその他の成分が少なく、有機溶媒成分が多い。
祭日は少なく、作業日が高濃度である。
夜間の気温低下による濃度増加の他に、早朝の作業開始での増加、昼休みでの減少、夕方の増加と夜間の残留が認めせれる。
低濃度の時と最高濃度では10倍以上の違いがあった。

作業前の早朝と昼休みにはVOCが少なく、作業時間にはVOCが増加した。
特にトルエンとエチルベンゼン濃度が高かった。

ケムキーでのイソシアネートの分析テープには、作業時間早朝と夕方終了時間から後の夜間にかけてだけ飛来し
、昼前後に少なくて、夜間に無くなっていることが記録されていた。

工事が大体終了したころでも、作業時間内に、短時間だけうっすらと飛来することもあった。

測定例3.

周辺住民の健康被害が問題になった産廃処理場で、自治体による精密分析が実施され、
そのサンプリング時間を区別した精密サンプリング場所でのTVOCの連続記録である。

サンプリングした日にも、その時間になると急に濃度が低下したり、サンプリング後に急に濃度が増加したりして不自然であった。
サンプリングした時のTVOCは、通常作業日の最高濃度の20分の1であった。

サンプリングの日のケムキーのイソシアネート分析記録テープである。
朝9時に分析作業者が現場に到着した時まではうっすらとイソシアネートが検出されていた。
サンプリング時間中にはイソシアネートは検出されず、サンプリング終了後にしばらくしてから明瞭に検出され始めた。
TVOC上下と平行な時間依存性の変化をしていた。


クロマトグラフで見ると、通常の日に比べて検出できた化合物ピークも少なかった。

測定例 4. 
田園地帯に囲まれた住宅地での計測例

今年のゴールデンウィーク100m程の所の田んぼに沿っているつくば市の住宅地内の家。
室外、窓開けで重い体調異変。 室内でも次第に体調悪化。
クロマトグラフでのTVOC変動と成分。
自動車排気ガスによる通常の大気汚染の主成分であるベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、
キシレンの合計濃度に比べて、「その他」化合物の割合が大きい。晴雨の影響はない。

昼夜の変動も不規則。 深夜2時~4時頃から短時間希薄なことが多い。
GWが終えてから低下の傾向。

ケムキーでのイソシアネート分析記録
15分ごとに●1つ。 ●4つで一時間の記録
測定を始めた夕方に来かつた。 その後一時薄れた。

1時間ほどごく薄い時があった。
濃淡はあるが汚染が続く。



VOCモニターでのクロマトグラムを見てみると、イソシアネートの濃度の高いときにVOCのチャートは低く、
逆にイソシアネートが低いときにVOCが多くなっていた。


同じようにイソシアネートが高く検出され体調が酷く悪い日のVOCモニターのクロマトグラムはピークが低くなっている。
あくまでも一つの仮説であるが、イソシアネートを含むマイクロセルの飛散により
VOCの吸着、減少という事態が起きている可能性がある。

建築現場などから飛散するイソシアネートは作業時間中のみ高濃度に検出されるが作業が終了すると徐々に低下する。
しかし、田園地帯で観測されて発生源が明確でないイソシアネート汚染は
高濃度で継続され、ゴールデンウィークが過ぎてから徐々に減少していった。

農薬の有効成分の徐放効果を狙ったウレタンなどのイソシアネートを原料として
マイクロセルの飛散が起きているのでないか推定している。

以上の測定事例について報告しました。どうも有り難うございました











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